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ソーラー電力セイル実証機イカロス

S・Tさん(♂)

ソーラーセイルとは「太陽光を推進力として航行する宇宙機」を指す。光で進むという発想は100年以上前から存在していたが、実現困難とされ、長くSFの題材として語られてきた。しかし2010年、日本の宇宙航空研究開発機構JAXAが打ち上げた探査機「イカロス」は、世界で初めて宇宙空間でのソーラーセイル航行に成功し、金星付近まで到達した。この成果により、SFと見なされていた技術が現実へと大きく前進したのである。太陽光が物体を押す力は現代物理学で証明されているが、その力は極めて微弱で人間には感じ取れない。しかし宇宙空間には空気抵抗が無いため、その小さな力が蓄積され、大きな推進力へと変わる。特に惑星間航行では燃料と電力の確保が課題となるが、ソーラーセイルには燃料を消費しない利点がある。さらにイカロスは薄型太陽電池をセイル表面に貼り付け、推進と発電を同時に行う「ソーラー電力セイル」として運用された。これにより航行の持続性と自律性が飛躍的に高められている。特に興味深いのは姿勢制御の仕組みだ。イカロスは液晶デバイスを利用し、セイルの一部を透明または曇り状態に切り替えることで光圧の差を生み出し、方向転換を実現している。限られた資源で太陽光を巧みに利用した非常に合理的な技術と言える。ソーラーセイルによる惑星間航行を実現した例は、現在もイカロスのみである。ただし、米国のThe Planetary Societyの「LightSail 2」やNASAの「ACS3」など、世界各国でも実験が進み、成功例は確実に増えつつある。いずれイカロスが唯一の例ではなくなるだろう。しかし、この歴史的な一歩を日本が先に踏み出した事実は揺るがない。今後も日本の技術が宇宙探査の最前線を走り続けることを期待したい。