3年ほど前から読みたいと思っていた『映画を早送りで観る人たち』という本をようやく手に取った。著者は、現代社会における映像コンテンツの受け止め方の変化に注目し、なぜ人々が映画を早送りで観るのか、その意図や背景を探っている。私自身も映像を「何かしながら観る」ことが多く、非常に興味深く感じていた。実際、作中のデータによると、倍速視聴の経験が最も多いのは20代で、必要ない部分を10秒飛ばしでスキップしたり、要約動画で内容を把握する人もいるという。著者はこれを「作品を消費する」と呼び、その原因の一つとして“時間のなさ”を挙げている。スマホを通じて常に新しい情報が流れる現代では、「内容さえ分かればいい」と考える人が増えているのだ。しかし、早送り視聴では登場人物の表情や沈黙、音楽の余韻といった本来の魅力が失われてしまう。それでも効率を求めないと生きづらい時代において、倍速視聴は現代人の焦りやストレスの象徴とも言える。この本は私たちに「コンテンツを味わっていますか、それとも消費していますか」と問いかけてくる。私自身は明らかに消費する側だったが、これからは“ながら見”をやめ、作品の時間の流れや感情を丁寧に感じ取りたい。効率より体験を重視することで、心に残る瞬間が増えればと思う。